2010年に60年代を想う

60年代は私にとって特別な思い入れがある。
なぜなら、私が生まれた年代であり
ファッション、音楽、映画すべてに
現代を予感させる大きなムーブメントが起きた年代であり、
センセーショナルな厚顔無恥がまかり通り
その潔ささえ時代の象徴だったからだ。

先日、トロントのフリーペーパーMETROのページをめくると
Twiggyの写真が目に飛び込んできた。
イギリスのモデルとして、60年代のファッション・アイコンとして
誰もがその存在をリスペクトした彼女は
2010年の今年、60歳になるという。

数年前、米国の人気リアリティー番組「America’s Next Top Model」の
審査員の一人として登場していたが
少々アンニュイな大きな瞳と大胆なショートヘア、マイクロミニから出たまっすぐの長い足、中性的なボディライン・・・そんな私の中に棲み付いていたイメージは微塵もなく
そのあまりにも普通のファッションや言動に少々落胆したものだ。

しかし、短いインタビュー記事の中にTwiggyらしい魅力的な言葉を見つけた。
60年代にはどんな思い出がありますか?との問いに

なにかを夢中になってしているとき、誰も立ち止まっていちいち感動したりしません。
その時になにが起こっているかなんて、なにが重要なのかなんて、誰も気づかない。
後になって振り返ったときに初めて、その時にどんなに素晴らしいことが起こっていたのか気づくのです。

労働者階級出の初めてのモデルとして
一つの時代の象徴にまでなった彼女は
常に全力で毎日を過ごしていたのだろうなと想像する。

60年代のあの貪欲なパワー。
なにかを変えて、なにかを築きたいという、今にも暴走しそうな
ネガティブとポジティブが交錯して生み出す
不思議に快い不協和音。

その源な何かと考える。

60歳になるのにどうしてそんなに素敵なんですか?との質問に
Twiggiyはこんな風に答えていた。

私は私の人生が大好き。
健康には恵まれているけれども、健康的な食事を常に心がけています。

やっぱり普通だ。
でも、その普通ということにこそ、底知れぬ逞しさが潜んでいるのかもしれない。

新年あけましておめでとうございます

すっかり年末年始のホリデー気分が取れた頃のご挨拶となり、
否、最早1月も終わろうとしている今日この頃のご挨拶となり、申し訳ありません。
しかし、この一言を言わないと一年が始まりません。

新年あけましておめでとうございます
今年も引き続きご愛読くださいますよう、よろしくお願い致します。

空からの来訪者


トロントにオリンピックの聖火がやってくる日の午後のこと。
仕事の手を休めて、ふと窓から見える風景に目をやると、バルコニーのフェンスに鳥がとまっていた。

ハトの休憩場所と化している我が家のバルコニーに鳥の姿があるのは見慣れた光景だ。
しかし、その鳥はハトにしてはいやに逞しい背中をしている。
白と茶の羽毛も猛々しい。
なんだろうと目を凝らすと、その鳥が横を向いた。
その顔はワシだった。

15階のバルコニーから街を俯瞰している姿は神々しい。
心は世の中に関する深い思考で満たされつつ、冬の空気に身をさらしている。
威風堂々とし、なにか大切なものを守るために生きている、そんな存在に見えた。

一枚写真が撮れないものかとこっそり窓に近付いたのがいけなかった。
彼は私を一瞥すると、迷うことなく巨大な翼を広げた。
一瞬ゆらりと下降して、そしてゆっくりと舞い上がる。
そんな飛び方をした。

彼が消えた北の空は青かった。
私はこれから、彼が再訪するのを永遠に近い気持ちで待つことになる。

11月の空に虹


11月の空を全速力で駆け抜けていった雨は、虹を残していった。

映画評「Under the Tuscan Sun」 - 宿題その1


今年は夏までに恋を一つはしようと思っていた。
しかし、恋というものはしようと計画を立てたからといって実行できるものではない。

ウカウカしている私を見かねた友人が情想を刺激するために
3本の映画を見るようにと宿題を出してきた。
その1本目がこの「Under the Tuscan Sun」である。

宿題を出されたのが6月下旬で、1本目を見たのが4日前なので、
私のウカウカ度が計り知れるというものだが、まあ、それはともかく・・・

「Under the Tuscan Sun」の舞台はタイトルが表す通り、イタリアのトスカーナである。

ライターのフランシスは35歳。サンフランシスコで欲しいものすべてを手にして暮らしていたが、夫が浮気し、突然の離婚で事態は一転。フランシスの落ち込みようを見かねたレズビアン・カップルの友人が、カップルの一人が妊娠したため行けなくなった旅行をプレゼントしてくれた。思い切って旅に出ることにしたフランシスは、旅先のトスカーナで古い家を購入、新しい生活をここで築こうと決意するが・・・というのが物語の大筋だ。

まず美しいトスカーナの風景に目を奪われた。
爽やかな太陽、色鮮やかに揺れる花、青い空から広がり落ちている海は光輝いている。
豊かな食材があふれるほど並べられたマーケットは、生の喜びに満ち満ちている。
そして、そんな風景に抱かれて暮らす人々は皆、恋のために生きている。

もちろん、いい男たちもたくさん。
不動産業者の心優しいイタリア男や家の改築を請け負うポーランド人たち、フランシスが町を歩けば声をかけてくるナンパな男たちさえ超ハンサムだ。

しかし、フランシスの新生活は苦難の連続。
荒波にもまれてクタクタになりながら、いろいろな現実を知り、苦労に苦労を重ねる。
努力は報われず、まわりの人間は彼女の思惑に反した行動ばかりとり、誰も彼女を理解しようとしない。
しかし、後戻りできない彼女はとにかく前進していく。
やがて、本当に変わることができた彼女の前に、やっと新しい恋の予感が訪れるのだった・・・

さまざまなドラマの中で、私の心に残ったのは、一人の初老の男性。
彼はフランシスの買った古い家の外壁についた小さな祭壇に毎日花を挿しにやってくる。
フランシスがバルコニーから手を振って愛想よく挨拶しても、目も合わせずに立ち去っていく。
しかし、彼女が本当に土地の人間となったとき、彼は初めて挨拶を返してくれたのだった。
人と人とが心を通じ合わせる難しさと、心地よさを感じさせてくれる素敵なシーンだった。

それにしても、だ。
フランシスがこんな風に新生活のスタートを切ることができたのも、もともと持ち家があり、それを買い取ってもらったからこそだ。

というわけで、この宿題から得たことを以下に記す。
●今後の課題:変わる努力をすること。
●ヒント:財力も割りと大事。

【作品情報】
Under the Tuscan Sun (2003)
邦題:トスカーナの休日
ジャンル:コメディ/ロマンス
監督:オードリー・ウェルズ
主演:ダイアン・レイン
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